10月期間限定



 行き交う社員たちが、何事かと言いたげに朋幸に視線を向けてくる。
 それもそうだろう。自分たちの上司である朋幸が台 車に大きな段ボール箱を三箱も載せて、押して歩いているのだ。社内で雑用のような仕事はまずしない存在だけに、非常に珍しい 光景だと、朋幸自身が思ってしまう。
 普段なら桐山が、朋幸に力仕事などとんでもないといわんばかりに、あっという間に この台車を奪ってしまうのだろうが、生憎、その桐山は会議のため、今は別行動だ。
 朋幸の頼りない足取りのせいで、台車 がふらふらと左右に曲がる。そのせいで積み重ねた段ボール箱がずれてしまい、慌てて位置を直す。
 あたふたとしている朋 幸の姿を見かねたように、男性社員が控えめに声をかけてきた。
「本澤室長……、よろしければ、わたしが台車を押しますが ……」
 再び台車を押そうとした朋幸は、笑って首を横に振る。
「かまわない。さっきから、何人にもそう声をかけられ ているが、ぼくの個人的な荷物なんだ。だからっ……多少頼りなく見えても、見なかったことにしてくれ」
 踏ん張って台車 を押し出すと、相変わらずふらふらしながら朋幸は室長室へと向かう。その間に、新たに三人の部下たちから台車を押そうかと声 をかけられながら。
 ドアをノックして秘書室のドアを開けてもらうと、朋幸と台車という組み合わせを見た久坂が、大きな 目を丸くする。
「どうされたんですか、これ……」
「ぼく宛の荷物を引き取ってきた。何かとんでもないものが入ってい るんじゃないかって、総務は戦々恐々としていたしな」
 なんとか台車を秘書室に押し込むと、久坂は慌てた様子で室長室の ドアも開けてくれる。
 応接セットのテーブルの脇まで台車を移動させたとき、朋幸は大きく息を吐き出した。
「見た目 ほど重くはないんだが、段ボール箱が大きすぎて、前がよく見えなかったんだ。ふらふらしながら台車を押していたら、手伝おう かと何人もから声をかけられた」
「わたしがお見かけしても、同じことをしたと思いますよ」
 久坂の言葉に、息を弾ま せながら朋幸は笑ってしまう。それから、いそいそと自分のデスクからカッターナイフを持ってくる。一方の久坂は、段ボールを 一つずつ慎重に床の上に置いていく。小柄な久坂が持てるほどなので、やはり重くはないのだ。だが、かさばるものが入っている ことは確かだろう。
 朋幸は段ボール箱の一つの側に屈み込み、厳重に梱包された箱を開けていく。
「これは……、いつ もの方からですか?」
「ああ」
 久坂が言っているのは、朋幸がアメリカの大学に留学していた頃からの友人のことだ。 現在はカメラマンをしており、気に入った写真が撮れると、お裾分けというわけではないだろうが、写真やパネルを送ってくれる。
「いつも、ぼくのマンションに送ってくれと言ってあるのに、どうしても会社に送ってくる」
「きっと、会社で室長に息 抜きをしてほしいと思ってらっしゃるのですよ」
「……まあ、入社したばかりの頃は、よく愚痴をこぼしては、聞いてもらっ ていたからな」
 だが朋幸の陽気な友人は、優しい反面、非常に冗談好きであり、サプライズという言葉を愛している。
 彼の性格をよく把握している朋幸は、慎重にテープを切っていきながら、ダンボール箱の中にびっくり箱でも仕込んであるので はないかと身構えていた。そうでなければ、この箱の大きさの意味がわからない。
 一応、友人から送られてきた荷物だし、 総務部がX線のセキュリティー装置でチェックしたところ、危険物は入っていないということだったので、疑いたくはないが――。
 こわごわと箱を開けた朋幸は、緩衝材を掻き分け、その下から出てきたものがなんであるか、すぐにはわからなかった。
 久坂に他の段ボール箱の開封を頼んで、自分は中身を取り出す。
「これ――……」
 折り畳まれた布製の品を広げ てみて、やっとわかった。帽子だ。しかも、やけに特徴的な形をしている。
「魔女が被っている帽子みたいですね」
 久 坂の言葉に、さらにダンボール箱の中を探る。
 ようやく顔を上げたとき、朋幸は首を傾げていた。それでも、久坂が開けて くれた次の箱の中身も確認する。こちらは、実にわかりやすかった。
「ハロウィンかっ」
 朋幸が取り上げたのは、ハロ ウィンでお馴染みのジャックランタンのぬいぐるみだった。それを見た久坂も、表情を綻ばせる。ぬいぐるみを久坂に手渡し、朋 幸は次々と中に入っているものを取り出し、テーブルの上に並べていく。
 いつもなら、堅苦しい書類や資料で占領されるこ との多い応接セットのテーブルも、このときだけはおもちゃ箱を引っ繰り返したような有様となる。
 本物のかぼちゃをくり ぬいてとはいかないが、プラスチック製のジャックランタンの置き物も大小いくつか入っており、電池を入れれば目が光るように なっている。
 ジャックランタンだけでなく、ちょっと不気味なものから可愛いものまで、さまざまなハロウィングッズが箱 には詰め込まれていた。ゴーストを模ったキーホルダーやストラップ、派手なフラッグに壁掛け、お菓子まである。ハロウ ィンパーティーが開けそうな量だ。
 テーブルの上からこぼれ落ちそうになっているハロウィングッズを、朋幸は久坂 とソファに腰掛けて眺める。
 これだけあると、感心するよりも呆れる。しかしそれは朋幸だけらしく、久坂は物珍しそうに グッズの一つ一つを手に取っては、楽しそうに眺めている。
 確かに、決してつまらないものではないのだ。むしろ――。
 疼く好奇心に負け、朋幸も小さなガイコツの人形のスイッチを入れ、奇妙な動きに思わず笑ってしまう。
「でも、どう してハロウィンなんでしょうね? いままで、こんなふうに送られてきたことはなかったと思うんですけど」
 ふと思い出し たように久坂が疑問を口にし、ああ、と朋幸は小さく声を洩らす。
「十月に入るまえに、これの送り主と電話で話したんだ。 そのとき、ハロウィンパーティーの話題が出て、日本じゃどうなのかって聞かれた……。向こうにいる頃は、理由はなんでもよく て、とにかくみんなで騒いでいたからな」
「今の室長からは想像つきませんね。騒いでいる姿なんて」
「ぼくは、好きだ ぞ。みんなで楽しくやるのは」
 友人とは、ハロウィンパーティーの思い出話でひとしきり盛り上がったのだが、どうやらこ のハロウィングッズは、友人なりの気遣いらしい。仕事で忙しい朋幸に、これらを眺めて気晴らしをしろというところだろう。
「……こうも派手なものが部屋にあると、今は仕事中だということを忘れそうになるな」
 あっ、と声を上げた久坂が、 壁にかかった時計を見上げる。
「仕事に戻らないと――」
 立ち上がろうとした久坂の腕を掴んで座らせる。朋幸は悪戯 を持ちかける子供のように笑いかけた。
「もう少しだけいいじゃないか。あっ、そうだ。久坂にもお裾分けするから、好きな ものを持って帰ればいい。どうせぼく一人じゃ、どうしようもないしな」
 困惑顔の久坂に、ジャックランタンのぬいぐるみ を再び押し付ける。朋幸には、久坂がこのぬいぐるみを気に入っているとわかっていた。
 なんとなく久坂を自分のペースに 巻き込み、朋幸はさらに段ボールの中を探る。
「でも、よくこれだけのものを買い集められましたよね。……なんだか、いか にも怪しげなものまであるし」
 派手なパッケージのお菓子を取り上げながら、久坂が感心したように洩らす。久坂が言う怪 しげなものとは、おそらくこれだろうと、朋幸は段ボール箱の底から、あるものを摘まみ上げる。
「何事も徹底している奴だ からな。お返しに、クリスマスには日本で売っているものをどっさり送ってやろう」
「そのときはわたしもお手伝いしますよ。 室長だけでなく、わたしまで楽しませていただいてますから」
 笑みをこぼした朋幸は、久坂の頭にすっぽりと魔女の帽子を 被せる。
「似合ってるぞ、久坂」
 途端に久坂は顔を赤くする。
「ダメですよっ。これは女性ものですよ」
「… …関係ないだろう」
「ありますよ」
 朋幸は唇を尖らせて少し考えると、段ボール箱の中を探る。
「他に何かあった はず……」
「もういいですっ」
 ソファの上で久坂とじゃれるように揉み合っていると、突然、軽い咳払いが割って入っ てくる。
 朋幸と久坂がほぼ同時にドアのほうを見ると、開けたままのドアの前に桐山が渋い顔をして立っていた。
「― ―ずいぶん楽しそうですね、二人とも」


 デスクに顔を伏せ、朋幸は肩を震わせる。さきほどから笑いが止まらなくて仕方ない。そんな朋幸に対して、桐山が淡々とした 声で言った。
「今日はこの部屋には、誰も近づけられませんね。……どこの遊戯室だと思われますよ」
「気に入ったもの があったら、持って帰っていいぞ」
 ようやく顔を上げた朋幸の言葉に、容赦なく桐山が鋭い眼差しを向けてくる。普通の神 経をした人間なら震え上がりそうな強烈な眼差しだが、朋幸は慣れたものだ。笑いすぎて滲んだ涙を指先で拭いながら、平然と受 け止める。
「久坂を怒るなよ。ぼくが引き込んだんだから」
「そんなことは承知しています。久坂は、あなたに甘いです から」
「お前は?」
 さきほどまでの笑みとは一変して、朋幸は艶然と桐山に笑いかける。眼鏡の中央を押し上げた桐山 は、にこりともせず応じた。
「あなたが一番ご存じでしょう」
「冷たくて厳しい男、ということか?」
「さあ、わた しの口からはなんとも……」
 おもしろみのない返答に、朋幸は一瞬、さきほど久坂に被せた魔女の帽子を、桐山にも被せて やりたい衝動に駆られる。もちろん、本当に行動を起こせるほど、朋幸は怖いもの知らずではない。
「――……少しはしゃぎ すぎた。大目に見てくれ」
 朋幸はそう言いながら、デスクの隅に置いたゴーストの小さな置き物を指先で撫でる。ちなみに 久坂のデスクの上には、気に入っている様子だったジャックランタンのぬいぐるみが置いてある。
「別に、咎めてはいません よ」
「留学していた頃のことを思い出したんだ。あの頃は楽しかった。近い将来、自分がどんな立場に置かれるかわかってい たけど、できるだけ考えないようにして、とにかく今のうちに楽しいことをしておこうと必死だったんだ」
 朋幸は上目遣い に桐山を見上げ、大仰にまじめな顔で付け加える。
「だけど、誤解するなよ。悪いことはしてないからな」
 なぜか桐山 は顔を背け、短く笑い声を洩らした。そんなことは心配していない、という意味だと、無理やり朋幸は解釈しておく。
 あっ という間に平素の表情を取り戻した桐山は、だけど少しだけ優しい目をしてこう言ってくれた。
「――……その頃のあなたに お会いしたかったですね」
「えっ?」
 思わず朋幸は姿勢を正す。
「わたしが初めてお会いしたときには、あなたは もう、この会社の一部として組み込まれた存在になっていましたから。自由で伸び伸びとしていた頃のあなたにお会いしたかった と、学生時代を懐かしんでいるあなたを見るたびに思うんです。もう叶わないことですけど」
 惜しみない愛情を感じること ができる桐山の言葉に、知らず知らずのうちに朋幸の頬は熱くなってくる。
 仕事に取り掛かるふりをしながら、ぼそりと言 った。
「……上司を、仕事中に口説くなよ」
「なら、あとにいたしましょう」
 さらりとそんな言葉を返されて、朋 幸は恥ずかしさを必死に堪えるため、まじめに仕事をすることにした。




 桐山が運転する車の後部座席に座り、恒例行事というわけではないが、仕事の資料に目を通していた朋幸は、ふっと息をついて 顔を上げる。
 空はすでに暗いが、見慣れた街並みはまだ明るく、人も車も多い。仕事で疲れていなければ、少し車を降りて 歩きたいところだ。それぐらい、秋から冬にかけての街は、朋幸にとって魅力的だ。ようは、気晴らしがしたいのだ。
 信号 待ちのため、デパート前で車が停まると、そろそろ冬物の新しいコートが欲しいなと、ぼんやりと朋幸は考える。
 ここでふ と思い出したことがあり、運転席の桐山に問いかけた。
「――桐山」
「なんでしょうか」
 バックミラー越しに桐山 が朋幸を見る。
「なあ、昼間どこに行ってたんだ。一緒に昼食をとる約束をしていたのに、寸前になって急用ができたと言っ てただろう。仕事の用でもなかったみたいだし」
「私用です」
「私用……」
 桐山はそれ以上は説明してくれない。 いくら二人の関係が深いとはいえ、相手が言いたがらないことを無理やり聞き出そうとするほど、朋幸はデリカシーに欠けていな い。そのくせ桐山は、知りたいことがあると朋幸相手にもけっこう容赦しないのだから、不公平ではないかと思うことがある。
 桐山の独占欲の表れだからこそ、我慢ができるのだが――。
 ここで朋幸は我に返り、慌てて頬を撫でる。ベッドの中 での、桐山の独占欲の表れである行為を思い出し、顔が熱くなってきた。
 車が走り出すと、再び資料に目を通す気にはなれ ず、シートに深く体を預け直す。
「――桐山、知っているか。今日は、ハロウィンだぞ」
「さすがに先日、あれだけのハ ロウィングッズを見せられたら、行事ごとに疎いわたしでも覚えていますよ」
「まあ、覚えていたところで、子供じゃないん だから、おばけの格好をしてお菓子をもらいに歩くわけにもいかないしな」
 社会人になってからハロウィンなどほとんど思 い出すこともなかったのに、友人の好意のおかげで、妙に今日という日を意識してしまう。
 だからといって、今日はやはり、 特別な日ではないのだ。
 いつものように車はマンションの駐車場に停まる。車から降りた朋幸は、桐山の手にあるものを見 て首を傾げた。見慣れたアタッシェケースの他に、紙袋を持っていたからだ。
「桐山、それ――」
「早く参りましょう。 風が冷たいですから」
 露骨に質問を遮られ、背に桐山の手がかかる。釈然としない朋幸は、促されるままマンションに入り、 部屋の前まで来たところで、桐山が意外なことを言った。
「突然で申し訳ありませんが、お部屋に寄らせていただいてもかま いませんか?」
 ドアを開けた朋幸は、驚きのあまりドアノブから手を離してしまったが、すかさず桐山がドアを押さえる。
 朋幸は目を丸くしたまま桐山に問いかけた。
「……いい、のか?」
 途端に桐山の表情が柔らかくなる。
「わ たしがお聞きしているのですよ」
 嫌などと言うはずがない。朋幸は気持ちとは裏腹に控えめに頷くと、すぐに玄関に入る。
 ここで思い出したことがあり、慌てて桐山を振り返った。
「リビングの様子を見ても笑うなよっ」
「それは……わ たしの好奇心を刺激することをおっしゃるのですね」
 墓穴を掘ったかもしれないと思いながら、やむなく桐山をリビングに 通す。
 予測はしていたが、リビングの様子を見た途端、一瞬表情を消した桐山は、次の瞬間には表情を綻ばせた。
 リ ビングには、先日友人から送られてきたハロウィングッズを出したままにしていた。
 決して飾っているわけではないと言い 訳をしたいところだが、無造作にテーブルの上に置いたままにしてあれば、まだ言い訳のしようもあったのだが、かぼちゃの形を したキャンディーボールに、溢れんばかりのカラフルなお菓子を入れてしまっていては、言うだけ無駄だろう。
 フラッグも 置き物も、すべてきれいに床やソファの上に並べてあり、かぼちゃ色のバルーンも何個も膨らませてあった。
 誰がどこから 見ても、ひっそりと一人でハロウィンを楽しんでいたのだろうと推測できる光景だ。
「ベ、別に……、目的があってこうした わけじゃないぞ。ただ、せっかく送ってもらったから、一応全部、部屋で眺めておこうと思っただけだ。段ボールに仕舞ったまま だと、ぼくが心苦しいから……」
 言いながら朋幸の声はどんどん小さくなっていき、桐山の楽しげな表情を目にしてしまうと、 空しい言い訳を放棄するしかなかった。
「……子供っぽいとか思っているだろう」
「思っていませんよ」
「ウソだ」
「本当です。むしろ、あなたがハロウィンを意識してくださっていて、助かりました。そうでないと、わたしだけがはしゃぐ 事態になっていたかもしれません」
 桐山が何を言おうとしているのかわからず、朋幸は戸惑いながら、ただ〈恋人〉の顔を 見つめる。すると、手に持っていた荷物をソファに置いた桐山がコートを脱がせてくれ、桐山自身もコートを脱いだ。すぐに帰る つもりはないという意思表示だ。
「――留学先でのように、楽しく騒ぐということはできませんが、二人の時間を過ごすこと はできます。……というより、そんな時間をわたしに与えてくれますか?」
 優しく頬を撫でながら桐山に囁かれ、朋幸は今 にも溶けそうな気持ちになりながら笑みをこぼす。
「ドラキュラのコスチュームも段ボールに入っていたんだが、早く言って くれれば、お前に無理やりでも着せたのに」
 それは困る、と言いたげな表情を浮かべた桐山に、唇にそっとキスされる。く すぐったさに、朋幸は喉の奥から微かに笑い声を洩らした。
「さっそくですが、ハロウィン定番の台詞を言っていただけます か」
 桐山の言葉に、すぐにはピンとこなかった朋幸はきょとんとする。すかさず耳元で囁かれた。
 あっ、と声を上げ た朋幸は首をすくめてから、悪戯好きの子供の心境でこう言った。
「……何かくれないと、悪戯するぞ」
 桐山には 『trick or treat』と囁かれたが、素直になぞるのも気恥ずかしいので日本語で。
 もう一度朋幸の唇にキス した桐山が体を離し、ソファに置いた紙袋を取り上げ、差し出してきた。
「これ……」
「昼間、出かけていたのは、これ を買うためです。悪戯されては敵いませんからね。何かお菓子を準備しておこうと」
 紙袋の中から取り出した箱の中には、 マカロンがきれいに並んでいた。きっと、社内の女性社員たちがここのマカロンが美味しいと話しているのを聞いて、買ってきた んだろうなと思うと、嬉しいと同時におかしい。
「……仕方ないな。お菓子をくれたから、悪戯は勘弁してやる。代わりに― ―」
 桐山の首の後ろに手をかけて、今度は朋幸からキスをする。柔らかく唇を吸い上げると、それ以上の激しさで桐山に貪 られる。
 濃厚なキスの合間に、朋幸は囁いた。
「――……来年のハロウィンからは、お前とこうして過ごしたことを思 い出す。絶対」
 そうやって一つ一つ、二人だけの特別なイベントを重ねて、大事な思い出に桐山が占めていく割合が増える のだ。
 どんなお菓子よりも甘い抱擁とキスを受け止めながら、朋幸はうっとりと目を細めた。







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